だいすきなヨコハマにやってきて以来、あっちこっち歩き回る日々です。面白そうな坂道を登っては下り反対から登っては下り、時間を変えて登っては下り。あっちのぬけ道こっちのぬけ道、老舗の中国料理、謎の洋食屋、タタズマイになにかを感じる場所は可能なかぎり探索していますが、まだまだ気になる「要探索」の場所だらけです。ふう。
わたしは、ちょっと、あせっています。
そんなことを言っていたら、あーた。 「リキシャルーム」はもう更地ですがな。ガッチョーン。跡地にマンションが建ってその中にまたオープンするんだそうですが、それはもうわたしが憧れていた「リキシャルーム」じゃない。行くだろうけど。 ガッチョーンとか言ってる38才がかっこいいオトナかどうかはちょっとなんとも言いかねますが、もうとりあえずそんなことを言っている場合じゃなくなっているようなのですね、このヨコハマというまちは。 アコガレのバンドホテルもいまやドンキです。乾電池を買いました。安かったけどなんか負けたような気がいたしました。イタリアンレストランのベニスもすでにありません。大桟橋も海員生協もきれいになりましたけど怪しいムードはなくなりました。セントジョセフの跡地にはマンションが建つかも知れません。中華街の東門横にもおおきいマンションが建ってしまいます。 わたしは本来、興味のあるものには近づきすぎず遠くから愛でるほうです。関わりを持たずにそうっと観察するこのわくわく。 でもねえ、無くなっちゃーモトもコも無いですよ。
バンドホテルの向かいの海っぺりに貼り付くように建っている、ちいさな小屋があるのは昔から気になっていました。喫茶店の看板らしきものは出ているのですが、ヒトケというもんが稀薄で、あれはいったいなんなのだろうなあ、とながいこと思っていたわけです。 なんなのだろうなあ、って、喫茶店なんだからすたすた入ってコーヒーでも飲めばいいんですけどね。
しかし「リキシャルーム」そのほかの件で、そうも言ってはいられないこともあるとシミジミ思い知ったわけです。 入ってみました。思いがけなく、店主は着物を召したおばあちゃんでした。 レモネードを頼んだら、レモンをギューギュー絞ってこしらえた、いいかおりのが出てきて嬉しかったです。
ああ、こういう場所だったんだなあ。 おばあちゃんは80才だそうです。もう50年もこのお店をやってきたのですって。いろんな話をしてくれて、寂しそうに「でも、来月で閉店なのよ」と仰いました。 まにあった、とはいえ、こんな謎の終わりもなんだかものすごくかなしくて、ちょっと泣いてしまったことでした。明日がその閉店の日です。
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