すずきさんはお花屋さんです。
すずきさんはなんだかミョーに植物がお好きらしくまあだからこそお花屋さんにな られたのでしょうが、そのお店も外見がなんというか森のようで、誘い込まれるよ うに中に入っていくとちいさな店内は雛壇のような構成になっておりまして、いろ んな季節の花がわさわさと配置されています。 そしてそのスキマスキマにも花がチビチビコマコマと咲いていて、それはコップに 挿されたちびの一輪であったり、どうやらご自宅で咲いたらしき数本だったり、そ んな値段の付いていない花たちがちゃんと一人前に飾られていてなんだかココロが 熱くなるのでした。お店のバイトの娘さんだってニコニコしていて実にかんじいい のです。 今日はこの花と決めて包んでもらっている間に、なぜかさっきまで気が付かなかっ
た花を発見したりもします。なんで気が付かないかなあ。わかりません。でもちく
しょうこの花もいいなあこれも欲しいなあと、あわてて追加をしてしまいます。そ
ういう謎の花園のようなお店なわけです。 すずきさん自作のお店のコピーは「花のなかに店がある」だそうですが、本当にそういうお店なのです。 そして見学にうかがったのですが、 押し掛けておいてこんな言いぐさもないとは思いますが、広大で贅を尽くした温室 というわけではないし、無知なので、そこにあるらしき珍しい植物の価値もようわ かりません。 それでも、そこは、面白くてたまらないのでした。温室も面白いし、その温室を含 む、庭そのものがミョーに面白い。植物のひとつひとつが面白いのはいわずもがなです。 あの庭は、なんというのでしょうかなあ。 きれいな庭とかすばらしい庭とか、そういうことではなくて。うーん、あえていわ せていただくと、「うっかりした庭」といいますか。 小さい声で「馬鹿の庭」、と言い添えたい気もします。 すずきさんは気に入った植物を見るとうっかり育ててしまうのではないかと思いま す。株が増えていればうっかり分けてまた植えてしまい、種が採れればまたしてもうっかり蒔いてしまう。そしてでかけた先でもうっかり採集し(合法的に)、海外からうっかり輸入し(合法的に)そしてまた温室や庭や店先にうっかりと植えうっかり増やして困った困ったといいつつ嬉しそうという、実に手に負えない馬鹿なんじゃなかろうかと思いました。 その植物にかける馬鹿パワーのようなものが庭に温室に店内に充満しているのですね。「あっなんだこの芽、こまったなあ、もう、こまったなあ」お庭で土を見つめて嬉しそうに困るすずきさんを思い出しつつ、わたしもうっかりと葉っぱの絵を描いたりしています。
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