OHTAKI'S MODERN CARTOON

1月4日の夜の話の巻

わたくし先日の1月4日、生まれて初めて病院の夜間外来というのに行きましたんです。

半年に一回くらい、体力が低下して身体が弱ると出る痛みがあるのですが、それがモーとんでもないことになって。
2日あたりからチトしくしくしていたのですが、なにしろ病院も正月休みです。行きつけの病院が開く5日まで、なんとか凌ごうと思っておりました。
ところが4日夜、にっちもさっちもいかないくらいになってしまって。いてーのいたくないの、っていてーに決まってますよ。わたしはこういう自分の中からの痛みには強いほうですが、これは生涯忘れられない夜になりそうだと思いました。

ちょっとヤバイことになったと思ったのが夜8時。思い切って寝て朝までやりすごそうと思ってベッドに入ったのに作戦がみごとに失敗しました。痛くてねむれんのです。1時になって足の裏からじんわりとイヤーな汗をかきはじめアレコレ意識をそらして今何時かなと思うとこれが1時5分。5分しかたっとらんのであります。気が付いたら身体中が冷えてかちかちと歯が鳴り始めました。

そこから救急車のことを考えて1時間。あの赤いくるくるランプ、ぴーぽーぴーぽーというマヌケなサイレンの音、ああ、頭の中でちゃんとドップラー効果まで表現している。こんなに救急車のことを一心に考えたのは生まれて二回目くらいです。

わたくし、決心しました。
救急車をよぶくらいなら自力で行こうと、とにかく手に触った服に着替えて保険証と財布とをコートのポケットに入れよろよろと家をでたのであります。

午前2時30分、タクシーで近所の国立病院へ。夜の病院の独特なムードにも、気圧されてなんかいられません。もうなにしろいてーんですから。診察室の前にはわたしのほかにもうひとり、50くらいのご婦人がいらして、このかたは病気ではなくて付き添いのようです。大きな診察室にどうやらご主人が運びこまれたらしい。餅でもつまらせたかね、なんてチラと思いました。

何分待ったでしょうか、やっとお医者様が小さな方の診察室でわたしを診てくれたのですが、夜の切開はよくないということで、明日来るようにと鎮痛剤を出されてすごすごと帰る羽目になりました。こ、こんなにいてーのに。

鎮痛剤が効くまで時間がかかります。脂汗をながしながら会計を待っていると、大きなほうの診察室から出てきたお医者さまが、件の女性になにやら話しかけた。

「今日明日で生死にかかわります」

ご婦人はきょとんと「きょうあすでせいしにかかわる?」って鸚鵡返しをしました。

あれからあの旦那さんはどうなったでしょうか。
帰り際、あまりに小さくなって坐っているご婦人に思わずお大事にと言ってしまいました。自分の声は消え入りそうで、びっくりしました。

お大事に、だって。
お大事に、だってさ。言わないほうがよかったのかもしれないけど言わずにはいられなかった。
どうしてわたしは自分が楽になるために余計なことを言ってしまうのでしょうか。

まだまだ鎮痛剤が効くまで時間がかかりそうで、あいかわらずどうにかなりそうに痛くて、冬の夜空が硬くて午前四時近い空気は針のようだし手袋は持っていたけどはめる気力もなくて適当にまとめた髪の後れ毛がみっともなくてダッフルコートは猫の毛だらけで。
もう本当に。

 

tulipa@mamioh.com *MAMI OHTAKI*

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