はんごうでごはんを炊いています。
突然はんごうでごはんを炊きたくなって、アウトドアショップで買ってきたんですが、いま、いろいろなのがあるんですね。すわりのいい丸形とかチタン製とか。「はんごう」じゃなくて「クッカー」とか書いてございますが。なにがクッカーだよ。クックドゥードゥルドゥー、だ。にわとりになてもしょうがないんですが。あの懐かしいそらまめ型のは「兵式はんごう」というらしいです。兵式・・・なんかモノ悲しいな。
そもそもアウトドアが好きとかそういいうわけではさらさら無くて、単に「はんごうで御飯を炊きたいな」と思っただけなんで、むしろ自然に台所のガスの五徳の上に載せて炊いています。いざ炊きはじめたら、ちょっとヘンテコかな?とも思いましたがまあたいしたことはないです。火力も調節できるし煤もつかないし。 吹き上がる力で蓋が持ち上がらないように厚手のデミタスカップを載せて炊きます。デミタスカップさえも持ち上がりそうになったら火を弱火にします。 炊いている間、軍手をはめて、はんごうのたてる音を聞き漏らさないようにガスの火のまえでじっと坐って待つわけです。これがもうホントにね、たのしい。 ぼこぼこぐじぐじ言っているあいだ、飯盒に木の杓子なんかをあてがうと、ぼこぼこぐじぐじが手に伝わってきます。炊けてる炊けてる。ふふふふふ。杓子で横腹を叩くと軽い音もします。まだまだ。 しばらくするとはんごうは静かになってちいさなぴちぴちぱちぱちという音がきこえてまいります。さあきたよ。きましたよ。杓子で叩くと気のせいか音が重い。これは本当にきましたよ。 火を止め軍手をはめて蓋をしたまま、じょうずにはんごうをひっくりかえす。そのまま15分。 このとき薪やしゃもじなどで底を叩くのは、アルミを凹ませ劣化させるので良くないらしいです。でも叩いておいたほうが底のごはんが剥がれてあとで洗いやすいという説もある。使ってきた人たちの主張するいろんなメソッド。わたしはまだ自分のメソッドを持つほど使っていないので、とりあえず軍手のままぱしぱしと平手で底を叩いてみています。いまのところいいかんじです。 炊きあがった御飯は中ぶたのお皿でたべます。横にコロッケとか直で乗せて。ワイルドー。手にあつい炊き立てのごはんの熱が伝わってきます。さすがアルミだ。熱伝導にすぐれている。 おいしくて、うれしくて、どんどん食べていくと、どんどん中ぶたによそったごはんが減ってきて手のひらがみるみる冷たくなっていく。この寂しさはね、もう、どうしようもない、せつなさだ。溜息が出ます。 もうちょっとだけおかわりをします。でも本体のはんごうはすっかり冷たいアルミの温度を取り戻している。熱伝導にすぐれているからね、なんたって。当然、そのなかのごはんも、相当冷めている。炊きたてのごはんはかなりひやめしに近づいている。
かなしい、かなしい、ごはんのおわり。
また、はんごうに残ったごはんのたたずまいがね。実に寂しいです。それを乗り越えるのがはんごうのわたしへの試練のような気がします。
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