OHTAKI'S MODERN CARTOON

夏空の下のそのまた下、蜘蛛の巣の下の町の巻

仕事で長崎に行ってきましたよ。
ははははは。いや、あんまり楽しかったもんで。

長崎の市街に入ったら、路面電車が走ってましてね。
ああ、なんかすごくいいなあ、と激しく思いました。電車のターミナルっていうのかな、一番発達しているあたりの路上から空を見上げると蜘蛛の巣の下にいるように空が線だらけでして。それは別に閉塞感でもなんでもなくて、蜘蛛の巣の下から見上げる気分のバカみたいな青空と夏の入道雲は、とてもとても目に面白かったんですよ。
これ、めちゃめちゃいいな、と思いました。
なんだかそれだけで、もうすっかり大好きな場所になりましたよ。

視線を下げると、街並みの向こうにぽっこりと常に山があって、それがまた微笑ましいくらい近くで。街と山がいっしょくたでコンパクト。ビルの裏が山っていいますか。長崎は坂が多いという話がありますが、正確には山に町が出来てるというのが近いと思う。タクシーで坂道を下りながら、もう絶対にあの屋根に突っ込むと思ったことが数回ありました。長崎で車に乗れる人はかなりのドライビングテクニックの持ち主なんではないのか。

港町らしく「新地」という中華街もありましてね。これがまたミニマムなミニマムな中華街ですよ。姫中華街といいますかね。でもわたしの大好きな中華街のあの怪しいムードを持ってる。(おばちゃんから皿うどんに欠かせないという金蝶ソースを買ったものの、肝心の皿うどんを買ってくるのを忘れた)

早起きしてひとりで歩いたオランダ坂の蝉の声も忘れられないな。石畳と緑を見ながらどんどんどんどん登っていったら、あんまり心が静まっていくので、このまま行き倒れたいな、とちょっと思ったんだった。

まったく知らない場所に行くのは面白い。
一生のなかで、もしかしたら、たった数時間だけしか過ごさないかもしれない土地で、知らない人ばかりのなかをぽつんと歩き回るのはむちゃくちゃ楽しい。
この道を曲がるとあの建物の裏に出る。この角を曲がってまっすぐまっすぐあるくと昼間のあの場所。あのおいしそうな桃カステラの店はあの商店街のはずれ。行けなかったけどおいしいと評判のおでんやさんはあの路地のむこう。

覚えても役にたたないかもしれない道。
でも、もしかしてまた来ることがあった時に、お店の名前は思い出せなくても、きっと歩けば思い出す。足が連れていってくれると思うんですよ。

 また行きたいと思いながら、いざ平常の生活に戻るとなかなか実行できないけれど、わたしはそういう「いつかまた行くつもりの場所の記憶」を集めるのが好きなのかもしれないな。

あの蜘蛛の巣の下からこんどは秋の空もみたいもんだよなあ。松翁軒のカステラを忘れずに買わないとな。大きく二切れ切ってぼんやりしながらゆっくり食べたい。そういう味だった。
 

tulipa@mamioh.com *MAMI OHTAKI* 

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