うちの台所にはモハメドが住んでいます。
アリです。
わたしが名付けたんですがね。そのまんまです。 去年から居るんです。いやオトトシからだったかな。いつのまにか台所で良く見るようになって、どこから来てるのかなあ、と思っていたんです。置いてあるとっくり椰子の植木鉢に巣があるわけでもないみたいなのに、いつも台所をうろうろしてる。 ヤツがヤカンに登ってる時にうっかり火にかけちゃって、蓋の上であわあわしているところを助けたこともある。 洗い物をしていて、溺れさせそうになったこともある。 世話が焼けるモハメド。 でも本当にヤツはどこから来てるんだろう。 先日のこと、モハメドがなんかくわえてえっさか楽しそうに歩いておりましたから、あ、これを追っていけば、ヤツがどこから来てるかわかるな、とひらめきましたよ。ファーブルですね。うふ。 ずーっと見ておりました。 紅茶の缶の横をぬけ、エスプレッソマシーンの脇をくぐり、さあ、ヤツが、どこに消えたと思いますか? えっさかえっさか楽しそうにアロハ醤油(ハワイ土産。ちゃんと「ALOHA SHOYU」と書いてある)に登っていったモハメド。まさか、まさかと思っておりましたら。なんと! あの注ぎ口からいそいそ入っていきやがるんです。 この衝撃をどうお伝えしたらいいでしょうか。ココ近年まれにみる衝撃でございましたよ。 まだ未使用だから中蓋がしてあるんですが、どうやらその中蓋の上で暮らしてるらしいのです。(図) 注ぎ口をおっかなびっくり覗いたら中にアレコレ持ち込んで悠々とシングルライフを楽しんでいるご様子。 きちんと生活感があるんです。 こ、これは。いやーたまげました。 しかし恐ろしいことにモハメドの秘密は、これで終わりではなかったのです。 翌日の朝、モハメド・ハウス(アロハ醤油)を複雑な思いで見つめておりましたら、ひょい、とモハメドがアタマをのぞかせました。
やあ、おはよう!良い朝だね! なんてかんじでしょうか。にこにこ出かけるモハメド。花瓶のバラに登ってご満悦の様子です。のどかだなあ。しかし、アロハ醤油で暮らしているとはなあ。
そう思いながらナニゲにアロハ醤油の瓶を見ますと、その口からモハメドがひょい。
なに?
お、お、おまえら二人暮らしだったのかー! どっちがどっちかわからないんで、今後もまとめて「モハメド」と呼び続けますが、働き蟻が二匹、台所の片隅で自由気ままな二人暮らし。しかもアロハ醤油の蓋で。
そんなことが起きています。 いいんですかね、そんなことで。 世紀末? なんちて。
モハメドがたは今日もアロハ醤油から嬉しそうに出かけます。 わたしも、モハメドを流さないようにお皿を洗っています。
そんな平和な大滝家の台所です。
1999/7/3 |