ある日、フト気がつきました。その時わたくしは喫茶店におりまして、ぼさっとしておりましたら、その出来事が起きたのでございます。
どんがらがっしゃーん。派手な音。ウェイトレスさんがカップを落としたようです。その時ですよ。フト気がつきましたのは。 「なんかこの音よく聞くな」そうです。わたくしは、この、どんがらがっしゃん、を確かによく聞いている。数日前の打ち合わせの時も違う喫茶店で聞いた。そのまた前にも聞いた。わたしはそんなによく飲食店に行くほうでもないのですが、その少ない回数の中で、かなりどんがらがっしゃん、を聞いているようなのですよ。はて。まあその時はそういうものか、などと思っていたのですが、その数日後に友人のフジエくんと中野のラーメン屋に入った時に、ええ、そうです。どんがらがっしゃん、をまた、聞いたのでありますよ。おお。 「なんかわたしが入ると、よくお店の人がお茶碗割っちゃうみたいなんだよ」と言いますと、ヤツがまた信じません。「へ〜?」などと懐疑的です。 まあ、それがどうした、という話ではありますからね、信じないならいいさ。しかし、その後、コーヒーを飲んでいた喫茶店で喋っていたフジエくんが、一瞬血相を変えましたね。わたしの視覚には入らなかったのですが、フジエくんの目の前でお店の人がカップを落としそうになって、すんでのところで受けとめたのだそうです。もし取り落としていたら、あーた、どんがらがっしゃん、ですよ。そら見たことか。 これはフジエくんも信じたようですが「あんた、疫病神?」などと失礼なことをいいやがります。「いまのコーヒーカップは俺の幸運パワーで中和してやったから割れなかったんだ」だそうです。のんきなやつ。 さてそれから何カ月後、またフジエくんとわたしはこんどは碑文谷ダイエー近所の蕎麦屋におりました。そこでなんとまたどんがらがっしゃんがおこったのであります。おおお! でも、こんども割れませんでした。それはフジエくんの幸運パワーではなくて蕎麦の簀の子だったから割れようがなかったということだったのでした。次はどこでどんがらがっしゃんを起こすのでしょう。わたくしは、飲食店に入るのが気が引けます。 1999/6/10 |