OHTAKI'S MODERN CARTOON

思い出のあのひとの巻

寒いですな。
仕事の打ち合わせで出かけて、どこかのショーウィンドウに映った自分を見てあっと思いました。
あのひとじゃないか。あのひとにそっくりじゃないか。

突然、猛烈に思い出したのですよ。

もう20年とちょっと前のことです。冬でした。わたしはまったくいけてないただの若い学生でした。テクノカットとかしてました。表参道の駅でぼんやりと銀座線を待っていたのでした。
そのとき目の前を颯爽と横切っていった女性。

すてきでした。
煉瓦色と焦げ茶の縞になったツイードのロングコートを着て綺麗なオレンジ色の革手袋をして黒々とした髪の毛はきゅっとひっつめてありました。
若くはないかたでした。50にはまだならないまでも髪は若干の白髪が見えて若い人にはない貫禄というかムードがあって。
一瞬の後ろ姿はあまりにも見事でした。

わたしはなんだかずうっとそのひとの格好良さを追いかけてきたような気がします。わすれてしまっていたけれども、いつでも、こころの奥底のほうで、あんなふうな大人の女性になりたいものだと思ってきたふしがあります。

わたしはことし夏がくれば42才になります。
ショーウィンドウに映った自分を改めてまじまじと見つめるとまあ確かに全体のコーディネートは似ていますが、コートは単に茶色だし皮手袋だってアズキ色だし、なんてったっていかにも粗忽そうなわたしの顔がこちらを見つめていて、あの女性にそっくりとは言いがたいです。

でも、まあまあです。
買いかぶりは大いにあるとしても、イイコぶって必要以上な卑下はせずに、足して引いて、そこそこ、いいんじゃないかと、まあまあ、だいじょうぶなんじゃないかと、思いました。

あのいけてない冬にあなたを見かけることができてよかった。

 

tulipa@mamioh.com *MAMI OHTAKI*

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