OHTAKI'S MODERN CARTOON

アホウな入院患者の巻
その4・いわゆる病院メシ伝説編


わたしは食いしんぼうで好きなものなら腹が裂けそうになるまでも食うほうですし目新しいものもやたらと食べたがります。

入院にあたって恐れていたのはそこでした。
わたしはそういうところ堪え性がないほうです。
たとえば、カヌレや甘栗やオレンジやいちじくのパンやいれたてのコーヒーや中国茶なんかを思ってイライライライライラしたらどうしよう。

手術の前々日に入院して、夕食から病院の食事をいただきました。
基本食の構成は白御飯+汁+メインディッシュ+小鉢+デザート(できあいのヨーグルトとか切った果物とか)です。フト官庁の食堂の定食を思わせるものがあったというとだいたいのかんじを掴んでいただけるでしょうか。

しかしまあ、これが食えない。
もうサッパリ箸が進まない。

わたしは偏食なのでうまいのまずいの言う前に「この食材は食べられない」というのもあるのですが、まあそういう条件をさておいても、どうもいただけない。
なんだかなあ。毎食ほとんど残しながら手術の朝を迎えました。

手術日と翌日は絶食して点滴だけだしその後3日かけて三分粥五分粥全粥と移行するのですが、なんとこの間もこのいやしんぼうの人間がサッパリ「食」というものに興味がいかない。まあね、全身麻酔なんかするとやっぱり疲れるんだと思います。手術後はじめての食事、三分粥とヨーグルトはまったく手をつけることができませなんだ。その後の粥も毎回半分以上は残してしまう。

粥から普通の食事をしてもいいようになって基本食が運ばれてくるようになってもさほど嬉しくはない。
なにしろ食欲が出ないんす。

毎回3分の2は残してしまう。御飯をだいたい3分の1か半分食べて、小鉢とデザートは完食、汁とメインディッシュは味見程度で残すことが多かったです。

どうにもねー。

病院の食事はマズイという噂があります。
わたしもはじめはなるほどこれが、とやや納得していたというか、不味いと明確には思わないまでもウマイじゃん!とは思えないというか。そこへんがまた「官庁の定食」なのですが、そういう魅力の少なさが箸を進まなくしているんではないかとアタリマエのようになんとなく思っていたのです。

ある日の夕食でした。
なんとなく食が進む。なんだかちょっとおいしいような気がする。あれっ?

その日は朝から心身がいいかんじで、エレベーターではなく階段で1階まで降りてみたり、りんごをキテレツに剥いたりして、ミもココロもちょっと愉快にしていたのです。なんとなく「今日から健康って気分」なんて思ったりしていました。

食欲が出ないのは病院のゴハンに問題があるからではなくて、わたしが食事をおいしいと思える状態に無かったということなんじゃないのかしらん。

この日のメインディッシュはヒレカツでした。3個のちいさなヒレカツを2個食べました。3個食べられそうな気もしたけど昨日まであんなに残していてヒレカツが出た途端完食かよ!ってかんじでなんか恥ずかしかったの。

結局最後の日まで全部のお皿をからっぽにすることは出来なかったけれども、改めて注意深く食事をしながら、「やっぱり病院のゴハンは駄目ね」とは思いませんでした。かといってウマイ!ってわけじゃないけどさ、マズイマズイと言われなきゃいけないようなことでも無い。
考えたらあんなに心配していたいちじくのパンや甘栗のことも思い出すことはありませんでした。

病院で食事に熱意を持てなかったのは、おいしくないからではなくて、わたしがそういう状態になかったということにすぎない。そう思います。
 

tulipa@mamioh.com *MAMI OHTAKI*

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