OHTAKI'S MODERN CARTOON

中年おんなみちの巻

呉服市というのがデパートの催事などで行われます。
いままで行こうとも思わなかったイベントですが、最近はちょっとしたお出かけに着物をとりいれるようになったもんで。

行ってみました。

いやすごいすごい。
着物着物着物着物。あたりまえっちゃあたりまえですが、いろんな着物があるもんです。袷、単、羽織、織り、染め、地味な色味に派手な絞り。そこに群がる中年女性達。会場隅の試着コーナーにはつくねんと畳があって鏡のまえでおばさまがたが各自お好みの着物を召しては真剣に鏡をごらんになっている。

これがですね、なかなかの光景なのです。
なにがなかなかなのかというと、なんというか、みなさん気合いがちがう。洋服を選ぶのとはまったくちがう緊張感と気概のようなものが気持ちよくそこここに漂っているのですね。なんだろうこのかんじ。

加藤タキ系のおばさまがシブーーーイ紬を羽織りはじめました。色あわせが特徴的でわたしにはどこがいいのかわかんない着物でした。しかしこれを小柄なタキ似はモダンに着こなしたのであります。どっひゃー。
文化人系おばちゃんファッションのかたでしたが、着物を羽織った瞬間から確実に違う女性に変貌して見えました。

フト後ろをみると小柄な、ちょっと品のいい白髪の女性がシッブイ色目の波頭の模様の単を羽織っておられます。これがまたよくお似合いなのですね。そしてそれも、そんなに格好良いことになるとは思っていなかった着物なのです。
そのひとだからこそ、格好がよかった。

うーむ。すごい。すごいぞ。
中年女の底力ってもんをかんじます。着物は中年おんなの最高の相棒じゃないでしょうかね。洋服だってもちろん「このひとならでは」っていうのはありますが、着物ほどそのひととなりのようなものが作用するってことじゃないような気がします。

ウウウ武者震い。中年おんな一年生でもあるわたしも、気に入ったクリーム色の縦絽を羽織ります。
おっ!イイネイイネイーネ!!もういちまいグレーの絽もいってみます。
おっ!こっちもイーネイーネイーネ!

イーネじゃないでがす。どっちにしようかな。
波頭のお着物のおばさまに聞いてみることにしました。わたしも、こういうときはけっこう厚顔です。

「あの、わたし迷ってしまって。これ似合ってますでしょうか」
「アラ!いいわねえ!縦絽!よくお似合いよ」

どうですか。「よくお似合いよ」噛みしめます。

するとそんな会話を聞きつけて四方八方からおばさまがたがわらわらと集まってきたのですね。なんだなんだなんだ。
「まあ、お若いし、お背が高いからよく映えるわ!」
わたしは161センチですが、この会場においてはやや大きいですし、もちろんお若くもないですが、やはりこの会場内においてはヤングといってもいいくらいかもしれません。
なによりいかにも着物ビギナーといったかんじでやっとこやっとこ試着していた様子が、さきほどから着物好きおばちゃんたちのお世話ゴコロをウズウズと刺激していたようなのでした。

「あの、こっちと迷っているんですけど、どっちが似合います?」
面白かったんで、みなさんに、迷っていた2枚を見て貰いました。
「あらぁそりゃこっちのベージュよお!」
「グレーなんかはこれから先いくらでも着れるわよぉ!」
「明るいほうがお顔写りがいいわよぉ!」
「まあほんとに御背が高いから映えるわねぇ!」

みんな、なんかすげえうれしそう。
わたしが「じゃベージュのほうに決めます。アドバイス、どうもありがとうございました」というと満足した着物おばちゃんたちはにこにこ頷いて散らばっていきました。わたしは、中年おんな一年生で、着物一年生でもありますが、まだまだ、やることが、いっぱいあるなあ、なんてことをシミジミと思った次第です。
このベージュの絽は大好きで大切な着物になりました。
 

tulipa@mamioh.com *MAMI OHTAKI*

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